株式会社Cool ALD設立 ~室温コートによる素材革新を目指す~

【本件のポイント】
● 山形大学学術研究院 廣瀬文彦教授(ナノテクノロジー・デバイス工学)らは、国立研究開発法人科学技術振興機構の大学発新産業創出プログラム※とその事業プロモーターである野村ホールディングス株式会社の支援により得られた研究成果をもとに、金属酸化物膜を室温形成する技術を用いたコーディングサービス、開発受託、装置販売などを行う「株式会社Cool ALD」を設立しました。
● 腐食に強く、ガスバリア性のある金属酸化物膜を室温形成する技術(室温原子層堆積法)を新会社が提供し、素材・部品・機器・有機ELの高性能化・長寿命化を果たすことで産業に貢献します。
● 新会社は、国際事業化研究センターインキュベーション施設及び有機材料システム事業創出センターを利用し事業を行います。

【概要】
山形大学学術研究院 廣瀬文彦教授(ナノテクノロジー・デバイス工学)らは、室温で金属酸化物膜を形成する技術(原子層堆積法)について、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の大学発新産業創出プログラム※とその事業プロモーターである野村ホールディングス株式会社の支援を受けて実用化を進めてきました。その成果として、昨年6月に開所した「有機材料システム事業創出センター」(山形大学と米沢市などとの共同提案により文部科学省の地域科学技術実証拠点整備事業として整備)を利用するベンチャー企業として、株式会社Cool ALDを設立しました。
ALDとは原子層堆積法Atomic Layer Deposition(ALD)の略で、Coolは低温(室温)で賢いという意味をイメージしてつけました。この会社は廣瀬文彦教授の研究室の元研究員を中心に従業員5名で発足し、同技術を用いた受託研究、コーティングサービス、装置販売、量産ソリューション提供を行っていきます。
金属酸化物膜は、腐食に強く電子部品や金属部品の腐食防止に活用されます。本技術では室温で膜を付けることができ、従来施工が困難であった精密部品や熱に弱い部品への適用が可能になりました。また、金属酸化膜は湿気などのガス透過を抑えることができ、有機ELや照明用LEDの長寿命化をもたらします。またナノ粒子に適用することで新しい機能をもったエレクトロニクスの創出につながることが期待されます。
室温原子層堆積は、廣瀬教授が2012年に発明したプラズマを活用した薄膜作製技術に基づくもので、対象製品を真空容器に入れ、原料となる有機金属ガスとプラズマで処理された水蒸気にさらすことで、表面に膜が形成されるものです。ガスを使うだけなので、複雑曲面をもつ精密部品にも大量一括処理が可能になりました。また原子層堆積は数リットル程度の狭小な真空容器で処理されていたところを、廣瀬教授らは2016年に1メートルクラスの六百リットルまで容器の大型化に成功し、大型ガラスパネルへの適用も可能になり、量産に向けて大きく前進することができました。
新会社は発足時で既に複数国内メーカーから問い合わせを受けており、当面受託開発やコーティングサービスを中心に活動を進めていきますが、長期的には、応用分野におけるガスバリア製品や装置製造において、山形大学国際事業化研究センターならびに米沢市と連携しながら、地域に新たなナノテク製造産業の創出を目指します。

Cool ALD_プレスリリースv4Final